黒部市/朝日町(富山) 猪頭山(1353m)、瘤杉山(撤退)(1353.2m) 2022年4月2日〜4月3日  カウント:画像読み出し不能

所要時間

4/2
5:33 小川温泉−−6:55 斜面取付(標高580mの林道カーブ) 7:11−−7:55 休憩(標高880m) 8:05−−8:26 982m峰−−9:27 1279m峰−−9:30 1250m鞍部(休憩、ワカンデポ) 9:46−−10:15 1374.3m三角点峰−−10:42 1397m峰−−11:02 1310m鞍部(幕営地として荷物デポ、休憩) 11:20−−11:27 猪頭山−−11:48 1361m峰−−12:15 1303m峰−−12:45 1243m峰−−12:59 標高1230m付近の雪壁で撤退 13:05−−13:10 1190m鞍部(休憩) 13:46−−13:55 1243m峰−−14:24 1303m峰−−15:00 1361m峰−−15:21 猪頭山を巻く−−15:26 1310m鞍部(幕営)

4/3
5:57 1310m鞍部(幕営)−−6:24 1397m峰−−6:55 1374.3m三角点峰−−7:12 1250m鞍部(ワカン回収)−−7:20 1279m峰−−7:58 982m峰(休憩) 8:10−−8:39 林道−−9:40 小川温泉


場所富山県黒部市/下新川郡朝日町(境界未定)
年月日2022年4月2日〜4月3日 幕営1泊2日
天候
山行種類残雪期の藪山
交通手段マイカー
駐車場小川温泉に駐車場あり
登山道の有無無し
籔の有無雪に埋もれてほぼ無し
危険個所の有無多数あり。急斜面の登り下り、尾根上に雪庇ができて急斜面を巻いたりと滑落注意。瘤杉山北西の1260m峰の登りでは痩せ尾根の急雪面+1mほどの垂直な雪壁が登場し、これを突破できずに断念した
冬装備ピッケル、12本爪アイゼン、ワカン(使わず)
山頂の展望西はブナに邪魔されるが他はまあまあ良好
GPSトラックログ
(GPX形式)
1日目
2日目
コメント数年間温めていた計画で小川温泉から往復。左膝の怪我は回復途上で冬の幕営装備の重さに耐えられるか不安があったが、問題は無かった。計画段階から瘤杉山に登れるか危ぶんでいたが、予想通り瘤杉山付近で危険個所が登場し瘤杉山には登れなかった。この他にも尾根上を雪庇が覆って雪壁で登ることができず北側急斜面をトラバースする箇所が何か所もあり、雪が締まった残雪期は滑落のリスクが高く、猪頭山まででも12本爪アイゼン、ピッケルは必須。天候、雪質には恵まれて直前に降ったと予想される新雪対策でワカンを持って行ったが新雪は数cm程度で古い雪は固く締まってワカンの出番は無かった。雪庇上での展望は文句無しで残雪期らしい山行を楽しめた


1390m峰付近から見た猪頭山。尾根上の他のピークと比較して低く目立たない
1390m峰付近から見た瘤杉山。周囲は落葉樹林ばかりなのにここだけ黒(針葉樹)で不気味な存在感がある
1日目
2日目


小川温泉前の駐車場ではなく川の対岸の林道入口に駐車 小川温泉
小川温泉建物の横が林道起点 最初の橋で除雪終了
除雪終点からしばらくは河川敷の方が歩きやすい 林道路側は雪が消えている区間が長い
奥のピークが今回登る尾根 雨量観測所。ダム制御のためだろう
定倉山に登った時に使った尾根 林道上にカモシカの死骸あり。骨と皮だけ
小川本流を渡って林道は尾根を斜めに上がる 林道のヘアピンカーブ突端。ここで林道と分かれる
ここでアイゼン装着。数年ぶりの重い12本爪アイゼン 雪が続く小ルンゼを選択。かなりの傾斜
尾根に達するがまだ傾斜はきつい 肩を越えると浅い谷地形を登った
谷が消える手前で東側の尾根に乗り移る 標高880mの小さな肩で休憩
今回の装備 振り返ると富山平野と富山湾が見えた
熊棚。あちこちで見られたがまだ熊の足跡は皆無 熊の爪痕。ブナは見やすい
982m標高点付近 982m標高点付近から二重山稜
標高1000m付近 尾根直上だけは地面が見える箇所あり
標高1090m付近 標高1180m付近から見た初雪山、定倉山
標高1180m付近 標高1230m付近
1290m峰。背景は朝日岳 1290m峰から南を見ている
1250m鞍部 1250m鞍部で休憩&ワカンをデポ
1250m鞍部から南を見ている 1330m峰付近から見た1374.3m三角点峰
標高1330m付近 1374.3m三角点峰山頂
1374.3m三角点峰から見た360度パノラマ展望(クリックで拡大)
1374.3m三角点峰から南への下りは急傾斜 1340m鞍部から1350m肩(小ピーク)を見る。雪壁状態で右を巻いた
1360m峰の右(西斜面)を巻いている最中 目の前の丸いピークの奥に1360m峰がある
1360m峰 1360m峰から1374.3m三角点峰を振り返る
1360m峰から南〜西の展望
1360m峰の南側。ここも急傾斜 カモシカの足跡
西へ尾根が分岐する1360m峰南側から見た1397m峰 1397m峰てっぺん。背景は初雪山
1397m峰から見た南〜西〜北の展望(クリックで拡大)
標高1380m付近の尾根上の灌木藪。かなり強固 1390m峰への登りも雪壁で西を巻いた
1390m峰から北西に落ちる微小尾根からてっぺんへ 1390m峰から南東を見ている
標高1380m付近から見た猪頭山、1361m峰、瘤杉山
1320m鞍部から見た猪頭山 1310m鞍部で幕営装備をデポ、瘤杉山を目指す
猪頭山への登り 猪頭山山頂
猪頭山から見た360度パノラマ展望(クリックで拡大)
1330m鞍部から見た1351m峰への登り。右をトラバース 標高1300m付近。これも右をトラバース
標高1320m付近 標高1320m付近から猪頭山を振り返る
1361m峰てっぺん
1361m峰から見た南〜南西の展望
1350m肩南の下りは急 1350m肩を振り返る
1340m峰から見た瘤杉山 標高1240m付近。少し藪が出ている
1260m鞍部から1303m峰への登り 1290m峰から1303m峰を見ている
1303m峰から見た瘤杉山 1303m峰南側の標高1280m付近
1170m鞍部から1243m峰を見上げる。結構な傾斜 足跡は猿のもの。群れではなく単独だった
1210m付近。最も傾斜が急 1243m峰てっぺん直下。僅かに雪庇あり
1243m峰から見た瘤杉山 1243m峰から見た1303m峰
1190m鞍部へと下っていく 1190m鞍部から登り返し
標高1200m付近。この辺から危険地帯に突入 標高1230m付近で尾根上に1mほどの雪壁登場。ここで撤退
雪壁を横から見ている。左右は切れ落ちてトラバース不能 1190m鞍部で休憩
1243m峰への登り返し 1303m峰から見た1340m峰
1290m峰から見た1340m峰 1260m鞍部の藪。ここは薄い
1290m峰直下の急斜面を登り返す
1290m峰から見た猪頭山方向。ここから猪頭山は見えない
尾根が屈曲した1290m峰からは猪頭山が見える 1350m肩への登り
1361m峰から見た猪頭山 標高1310m付近から1280m鞍部まで北斜面をトラバース
猪頭山への登り返し 帰りは猪頭山西側を巻いた
猪頭山北側で尾根に復帰 1310m鞍部にデポした荷物。今夜はここで幕営
マイホーム完成。いい場所で夜中の強風を避けられた 日本海に沈む夕日
翌朝の出発前の猪頭山 1390m峰への登りからスタート
標高1330m付近 標高1370m付近から見た針ノ木岳、黒部別山方面
1390m峰南の1350m峰付近から見た東側の展望。もう日の出を過ぎているが後立山の裏側に隠れている
1390m峰南の標高1380m付近から見た南側の展望
1390m峰から猪頭山方向を振り返る
1390m峰から見た1374.3m三角点峰 1374.3m三角点峰南の1360m峰直下
1360m峰から1340m鞍部まで北斜面をトラバース トラバース中
カモシカの足跡 1374.3m三角点峰北側から見た1290m峰
1250m鞍部にデポしたワカン。一度も使わなかった ワカンを回収、ザックの裏へ
1250m鞍部からの登り返し 1290m峰てっぺん
市町界尾根を離れて北へ 標高1220m付近
標高1170m付近 標高1000m付近。二重山稜に突入
982m峰に新しいスノーシュー跡発見! ここで引き返していた 標高950m付近。急な下りでスノーシューで滑った跡
標高830m付近。尾根が狭まる 標高730m付近。尾根が消えて西の尾根に移る
標高720m付近 往路を辿って標高630m付近から小ルンゼを下る
小ルンゼから見上げる。かなりの傾斜 林道から見た小ルンゼ
スノーシューの主は林道ではツボ足 往路では無かったデブリ
往路では無かったカモシカの死骸。2頭も見るなんで初めて ここから平坦な河川敷に下りる
スノーシューの主も河川敷を歩いたようだ 除雪終点
小川温泉到着! ご苦労様!


 黒部川と越道峠に挟まれた山稜に森石山、瘤杉山、猪頭山の3つの山がある。森石山については20121年4月に登頂を果たしたが、既に残雪が少なくて大半が藪漕ぎであり残り2つの山は翌年以降にせざるを得なかった。

 残り2山を登るルートとして考えられるのは2021年と同じく宇奈月ダムから森石山経由と、小川温泉から小川沿いの林道を上がって越道峠西側の尾根に上がって2山を往復するルートである。どちらも余分なピークをいくつも越える必要があり労力、所要時間とも同等と考えられたので、未踏である小川温泉経由に以前から決めていた。このルートの場合、標高を上げるのに使う尾根が北向きなので遅くまで残雪が期待できるメリットがある。

 このルートの場合、おそらくは猪頭山までは問題なく登れると思うが、瘤杉山が問題だ。途中の尾根幅が細いことと、瘤杉山山頂直下の等高線は異常な高密度で相当の傾斜が予想され、下手をすれば崖の可能性すらある。雪の付き方、雪質によってはリスクが高すぎて撤退の可能性が高いだろう。一般的に傾斜がきつい場所は雪が落ちやすいので、ここの雪が落ち切って藪が出ていれば安全に登れる可能性が高まるが、今年は残雪が多いのでそれが期待できるかどうか。

 ネットの検索では瘤杉山は無雪期に黒薙駅裏から登った記録が複数発見できたので、それほど藪が酷いわけではなさそうで、今回登れなくても雪が降る前の晩秋にでも登ればいいだろう。そんなわけで今回は危険度が高い場合は瘤杉山は登れなくてもいいかとの考えが最初からあった珍しいパターンだった。

 実行の時期であるが、天候の都合で4月最初の週末となった。予報では前日の金曜日は寒気が入って北陸では雪が降るそうだが、土曜には回復して広範囲で安定して晴れ。しかも寒気の影響が残って気温が低めで雪の締まりが期待出来て条件はいい。問題はコロナの影響もあって2,3年間幕営装備を背負っていないことである。しかも左膝が完治しておらず、いきなりの冬装備の重さに体が耐えられるかどうか。こればかりはやってみたいと分からない。

 久しぶりの幕営で準備は時間がかかった。厳冬期用の重いシュラフに防寒装備とガスは雪を溶かして水を作るためにたっぷり。飯は非常時を考慮して多めに持つことにする。今回は激ラッセルになるとは思えないのでスノーシューではなくワカンとし、アイゼンはクソ重いがグリップは極めて良好なグリベルの12本爪アイゼンを数年ぶりに使うことにした。ピッケルは軽量なものではなくマジなピッケルである。ザックの重さはおそらく15,6kgだろう。ちなみに私の夏山幕営装備なら12,3kgである。ザックは日帰り用の35リットルではなく55リットル。横に荷物を付ければこれでも対応可能だ。ただし藪があるとザックの横に取り付けた物が引っかかるのが厄介だ。特に銀マットはボロボロになってしまう。

 金曜夜に出発。富山東部の山は久しぶりで白馬経由で糸魚川で国道8号線に入って西進。白馬では気温が-1℃まで下がったが日本海沿岸に出ると+6℃程度に。これなら凍結の心配はない。県境の境川を越えて朝日町に入り、小川温泉向けて南下。仮の宿は朝日ダムとした。朝は冷え込んで水たまりに氷が張っていたが、雪が締るという点ではいいことだ。

 翌朝は朝飯を食ってパッキングを済ませてトンネルを抜けて小川温泉へ。建物の前の駐車場は温泉のものか公共のものか判断が付かないので、川を挟んだ対岸にある雪に埋もれた林道入口に駐車。これは定倉山に登った時と同じだ。もうライトが不要な明るさであり、重いザックを背負って出発。さて、無事に戻ってくることができるだろうか。今回はそんな不安があるので、車のフロントガラスから見えるように今回の山行計画程と個人情報を書いた紙を車内に置いておいた。日帰りなら何もしないでも問題ないと思うが、このまま夜中まで車が止まったままだと心配される可能性がある。でもこのような情報開示を下手な場所で行うと車上荒らしのリスクがあるので悩ましいところだ。

 定倉山に登った時には林道は少なくとも小川本流にかかる標高470mの橋付近まで除雪されていたが、今回は小川温泉のすぐ上流にある橋までであった。ここで林道を下りて平坦な河川敷を進むのは前回の経験から。雪が残って斜めの林道よりは格段に歩きやすい。予想通りツボ足でも全く沈まない雪で、この状況が最後まで続けばかなり楽に歩けるだろう。問題は昨日の新雪がどの程度積もったかだが、これは高度が上がらないと分からない。

 標高440m付近の沢にかかる橋までは8割程度の区間で雪が消えた路側を歩くことができた。いくら雪が締っているとはいえ固い地面を歩くよりは負担があるので、地面が見えた個所があるのは助かる。橋より先は残雪が増えてほぼ雪の上を歩くが危険個所はなく、アイゼンやピッケルの出番はまだない。

 標高460m付近ではカモシカの死骸あり。古いものらしく肉はとほんど食われて骨と皮しか残っていなかった。林道に転がっているということは急斜面を転落したのだろうか。「明日は我が身」と気を引き締めた。

 小川本流にかかる橋を渡って目的の稜線の東斜面を斜めに上がっていく林道をそのまま進む。斜面に取り付きたいところだが傾斜が急すぎるので、標高580mのヘアピンカーブの突端から最短距離で尾根直上に出る予定だ。

 その地点は全体的に斜面の傾斜は急で楽に登れそうな場所は皆無で、ここでアイゼンを装着しピッケル片手に雪が詰まった小ルンゼに取り付く。かなりの傾斜だがアイゼンが良く効いてグングン高度を稼ぐ。下を見下ろすと下りはバックじゃないとヤバそうな傾斜であった。

 尾根直上に出てもまだ傾斜はきつく油断できない。傾斜がきついルンゼでも雪があったので傾斜が緩まる尾根上は当然のように雪はあるだろうと予想していたが、その予想は裏切られることは無かった。これならこの先で藪に悩まされることはあまり無いだろう。尾根の植生は自然林で落葉しているため先が見通せて有り難い。杉花粉が無いのはもっとありがたいが、この標高では下界の花粉がまだ届くようで目の痒みを感じる。

 小さなコブのような肩を越えれば尾根幅が広がりやや傾斜も緩んで安全領域。しかし重い荷物になかなか足が上がらない。まあ、今日は最悪でも猪頭山まで届けばいいので急ぐ必要はない。体力をセーブしながらゆっくりと登り続ける。東側に顕著な尾根が現れてもそのまま尾根の西側の広く浅い谷を登っていく。谷が斜面に消える地点で東側の尾根に乗り移った。尾根の直上と西側直下のみ僅かに灌木藪が顔を出していたが、他は一面の残雪に覆われていた。

 標高880m付近で肩が登場し、僅かながら平らな場所になったので早めの休憩。ここまで雪質は完璧で背負っているワカンの出番はない。まだ新雪は皆無であり、この分だと標高1400m付近でもほとんど新雪は積もっていないかもしれず、場合によってはワカンは適当な場所でデポしてもいいかもしれない。

 標高982m峰より先はしばし二重山稜になっていて、地形図の表記通り中央には凹んだ部分もあった。東側の尾根の方が高いのでそのまま直進した。再び傾斜が出てくるがもう急な場所はなく、ブナが中心の明るい尾根を淡々と登っていく。予報通りの好天で日焼けするのは確実なので、先ほどの休憩時に顔に日焼け止めを塗っておいて正解だった。

 この尾根には熊棚があちこちで見られたが、まだ熊は冬眠から目覚めていないようで雪の上に熊の足跡は一度も見かけなかった。見かけなかったと言えば、今回歩いた長い尾根上では目印は1つも見かけなかった。目印に注意しながら歩いたわけではないので見落としがあったかもしれないが、少なくとも目立つ場所には無かったと言える。このルートを歩く人は少ないということだろう。

 1290m峰から西に延びる顕著な尾根への合流点への登りは広い尾根でブナが比較的少ない。西から合流する太い尾根に乗り雪稜を緩やかに上がると1290m峰。先ほど合流した太い尾根は負釣山から続く尾根であり、ネットの検索ではこの尾根を経由して猪頭山に登る人もいるようだが、小川温泉起点よりもルートが長いし尾根上のピーク数も多いので相当大変だろう。なお、下山後にネットで検索したら、この翌日(4/3)にこの尾根から1374.3三角点峰(ネットでは朴ノ木山と表記)を往復した記録をヤマップで発見した。おそらく私の足跡が残っていたはずだが、そのような記述は無かった。

 1290mを越えても新雪はごく僅かで、この先も積雪が増えるとは思えないのでどこかでワカンをデポすることに。ただし、今のピークはだだっ広く、もし帰りにガスられたらワカンを発見できない可能性があるので、尾根幅が狭まる鞍部でデポすることにした。

 1280m峰、1270m峰、1279m峰を越えて広い尾根を緩やかに下っていき、1250m鞍部で休憩がてらワカンをデポすることに。この尾根のブナは幹が太く、鞍部のブナは私一人では抱えきれないような太さであった。相変わらずあちこちに熊棚が見られ、スベスベのブナの幹では熊の爪痕が見やすいし、過去の爪痕と思われる痕跡も多数あった。熊にとっては登りやすい木があるのだろうか。

 休憩を終えて重いザックを背負い直して出発。ワカンをデポして多少軽くなったはずだが残念ながら体感的には大差なし。ここまで雪を踏み抜くことは皆無だったので、おそらく雪が緩んでも大丈夫だろう。今の時間帯は雪が固く締まってツボ足では滑りやすいので、アイゼンを履いたままの方がいい。

 1330m峰へと緩やかに登っていくが、相変わらず太いブナの気持ちいい稜線が続く。目立たない1330m峰付近から尾根の東側は雪庇が切れ落ちているのでやや西側を進んでいく。今年は雪が多いのでおそらく例年よりも雪割れが少なくて藪漕ぎも大幅に回避できていると思われる。尾根上にはクラックは見られるが藪が出ている個所は無く、残雪期らしい快適な雪稜歩きだ。

 1330m峰まで達すればもう大きなアップダウンは無くなり、細かなピークをいくつも越えていく作業となる。横移動の距離が長いので行きも帰りも時間がかかりそうだ。尾根の先にブナ越しに見える最も高い真っ白な丸いピークがおそらく1374.3m三角点峰だろう。この高さまで達すると尾根は雪庇が発達し、東側が雪庇の雪壁となって立ち木が無いので尾根の東側の展望がずっと開けた状態が続き、西側は背の高いブナが立ち並んで展望はイマイチだ。

 1374.3m三角点峰への登りは尾根幅が広がり、緩やかな雪庇が続く尾根直上でなくても歩くことが可能で、ショートカットを兼ねて広い斜面を登った。登り切った1374.3m三角点峰は巨大雪庇の上らしく、遮るものがない大展望だ。北東側は初雪山が真っ白な姿を見せていて、その右側の台形の山頂は犬ヶ岳に違いない。初雪山の右手の2つ並んだピークの右側が定倉山。さらに右手には朝日岳、赤男山、雪倉岳、鉢ヶ岳、白馬岳、旭岳、清水岳と後立山連峰が続く。南西側は立山〜剱岳〜毛勝三山〜滝倉山〜駒ヶ岳〜僧ヶ岳だろう。

 平坦なてっぺんからは次の1390m峰が見えているが、尾根の東側は雪庇が崩壊して雪壁の連続だ。尾根のてっぺんが安全に歩けるような状態かどうかはここからでは窺い知ることはできないが、尾根の反対側はそれほど急傾斜ではないはずなので、そちらに迂回することも可能であろう。

 地形図を見る限りでは1374.3m三角点峰のてっぺんは三角点の北側で、三角点より高い位置にあると思われる。当然ながらこの時期では地面は積雪の下で三角点の痕跡は皆無。無雪期は藪に埋もれているのだろうか。それとも容易に発見できるような場所なのだろうか。

 1374.3m三角点峰から猪頭山が見えているのかどうか分からないが、剱岳と毛勝山の中間付近の低い位置にブナ等の落葉樹ではなく黒い針葉樹がたくさん生えている三角形のピークが気になる。もしかしたらあれが瘤杉山であろうか。だとしたら予想通りにヤバそうな山だ。というのも、過去の経験から周囲は落葉樹林なのに、ある一部だけ針葉樹がまとまって生えている場合、痩せ尾根や岩場、急傾斜などの危険地帯である可能性が極めて高いのだ。遠くの三角形の山はまさにそれに該当する。あれが本当に瘤杉山か分からないが、そうであったら危険度はかなり高そうだ。その前にあそこまでたどり着くのにどれほど時間がかかるのか予想できないくらい遠くに見えた。ちなみにこの山が本当に瘤杉山だと分かったのはもっと進んでからであった。

 西に大きな尾根が分岐している1360m峰にかけては微小ピークが3つあるが、最初のピークは北側に雪庇ができかけて傾斜が非常にきついため、尾根の右側(西側)をトラバース。ここの傾斜もきついので滑落注意だ。次の微小ピークもそのまま西側を巻いて尾根に復帰し、短い急雪面を登れば3つ目の微小ピークである1360m峰。このすぐ先が大きな尾根が分岐するする1360m峰だ。ここから見ると1397m峰にかけての尾根の東斜面は傾斜が急で雪庇が崩壊している。おそらくここは早い時期に雪が割れて尾根上は藪が出てしまう区間だと思う。今年は残雪が多いのでまだ雪に覆われているが、尾根上には多数のクラックが走っていた。

 西に大きな尾根が分岐している1360m峰はてっぺんを通らずに東側を巻き、1397m峰へと向かう。1397m峰は今回のルートの中で最も標高が高いピークだが、地形図に山名の記載は無いし地元でも無名のピークらしい。そういえばネットで記録を検索していたら、既に越えた1374.3m三角点峰は「朴ノ木山」と書かれたものがいくつかあった。念のために日本山名事典で調べてみたが未記載だった。

 1397m峰への登りも東斜面は切れ落ちているので西側を巻き気味に登る。右に下がった雪の斜面が続くので左足への負担が大きい。登り切った1397m峰も立木皆無。ここで地形図を開いて猪頭山の位置を確認。山頂手前から東に尾根が分岐してピークがあるはずで、やっと猪頭山がどれか同定できた。こことの高低差は50m程のはずだが、思ったよりも高さは低く見えてがっかり。地形図に記載された山なので目立つ山かと思ったら全く目立たない山であった。もしかしたら地形図の猪頭山の位置が間違っているのでは?と思えるほどであった。ここからでは1390m峰が邪魔して瘤杉山は見えない。

 瘤杉山のヤバさとは別に、猪頭山西側の1361m峰への登りも気になる地形で。尾根の南側は切れ落ちて尾根のてっぺんは平坦ではなくナイフリッジ状で、おそらく急な北斜面をトラバースするしかなさそうだが、はたして安全に通過できるレベルであろうか。

 この下りも尾根上には多数のクラックがあり、短い距離ながら尾根直上の雪が消えて強固な灌木藪が出ている箇所があった。今は左右に迂回できるほど雪が残っているからいいが、あと2週間もすれば藪に突入する必要があるだろう。

 1390m峰への登りは雪庇になりかけで尾根直上は登れず、右を巻いて微小尾根から尾根に復帰した。1390m峰近辺も雪庇崩壊が連続して雪面は平らな部分はなく、右斜めに下がった状態が続いて膝の怪我がある左足への負担が大きい。幸いにして膝にはあまり影響は無かったが足首を支える筋肉が疲労し、翌日は左足の足首に力が入らず不安定で、その次の日から筋肉痛が出て1週間近く続いた。

 そろそろ猪頭山が近付き、幕営可能な場所を物色しながら歩く必要が出てきた。計画では猪頭山近辺で幕営予定だが、地形図を見る限り手猪頭山手前の1310m鞍部が幅が広く、最適である可能性が高い。

 1310m鞍部北側の1320m鞍部付近まで下るとやっと尾根東側の雪庇崩壊が消えて歩きやすい尾根に変わる。1320m鞍部は風の影響か雪庇とは逆に雪面が凹んだ部分があり、風下の東側に開けて西側は雪壁になっていた。ここなら幕営で西風を避けられるが雪壁に近い場所は周囲より凹んでいて、このような場所は夜間は冷気が溜まって周囲より気温が下がって寒いことは過去に経験済みで、西寄りの風を避けられつつもっと開けた場所を探しながら下ると1310m鞍部付近にまさにそんな場所があった。先ほどよりも雪面の凹みが浅いが「盆地」ではなく半円形で、これなら冷気が外に逃げるルートがある。

 ここで幕営用の荷物はデポして、軽量化した状態で瘤杉山へ向かうことにする。その前に休憩。デポする荷物は大型のビニール袋に入れて濡れないようにしておく。この状態はまさに「温室」なので、空のペットボトルに雪を詰め込んで袋の中へ。これで水作りのためのガスを節約できるだろう。ついでに色の付いたビニール袋に雪を詰めて、これも雪が溶けるよう日当たりのいい場所に仕掛けておく。

 瘤杉山に向かう装備はアイゼン、ピッケル、少しばかりの防寒装備、行動用の水と食料、ヘッドランプとした。さて、無事に瘤杉山登頂を実現して戻ってくることができるか、それとも途中撤退か、まさかの遭難だけは避けたい。

 これまでと違って広く緩やかな尾根を登ると猪頭山山頂に到着。背の高いブナが多くお世辞にも展望がいい山とは言えないが、一部の方向はブナが無く開けている。1390m峰近辺の尾根上は東側は急傾斜で半分崖のような感じで雪庇の崩壊が連続して、どこも東側の展望が開けていたのとは対照的だ。まあ、それだけこの山頂は安全エリアということだろう。

 さあ、ここからが本番。1290m鞍部までは普通に下っていける尾根であったが、1390m峰から見えたように鞍部から1361m峰への登りは尾根の左半分(南側)は雪庇が崩壊して垂直の雪壁で、尾根直上も一緒に崩壊してしまったようで残った雪はどこも急な傾斜であった。尾根のてっぺん付近は危険でとても歩けないので右に大きく巻くしかない。急傾斜のトラバースは滑落しやすいので要注意だ。

 トラバースした距離は大したことはなく標高1300m付近で尾根に復帰し、標高1310m付近にある傾斜がきつい肩を越えれば傾斜が緩んでまともな雪稜になり尾根直上の平坦地を歩けるようになった。見える範囲では1361m峰まではこんな歩きやすい尾根が続くようだ。

 1361m峰は地形図では尾根幅が細く見えるが、実際に現場を歩くと普通の尾根だった。冬場に風下となる東側は相変わらず急斜面の連続で雪庇が崩壊した雪壁であるが、尾根直上を普通に歩ける幅があった。ここからは間近に瘤杉山が見えるが、1374.3m三角点峰から見えていた黒く三角形に尖ったピークがまさに瘤杉山だった。このピークだけが針葉樹に覆われた黒い山肌と木が全く無い白い斜面との斑模様で、この界隈のブナが中心の尾根とは明らかに植生が異なる不気味な存在だ。おそらく難関は鞍部からの取り付きだろうか。残念ながら鞍部付近はここからは見えないので尾根のつながりが良く分からない。

 1361m峰南端の1350m肩からの下りは急だが、バックで下るほどではなかった。振り返って見上げる1350m肩は鋭く尖ったピークに見えた。2つの1340m峰には危険個所は無く、1260m鞍部へと下る尾根では一部で尾根上に灌木藪が出ていて、距離は10mくらいだが藪を突っ切る場所があった。でもここの灌木藪はそれほど強固ではなかった。背の低い笹はあったが背丈を超える地獄の根曲り竹は無かった。

 1290m峰付近からは尾根幅が広がって雪庇は消える。1303m峰は森石山に続く尾根との接合点で緩やかな山容で雪庇の崩壊は無い。ここから森石山まではいくつものピークを越える必要があり、今回のように猪頭山を狙う場合は無駄が多すぎる。これまで同様にここにも人工物は皆無だった

 次は1243m峰で1170m鞍部へと淡々と下っていく。1170m鞍部で動物の足跡が登場。これまでも雪の上に足跡はあちらこちらで見られたが、この足跡の主は少し珍しい存在。単独のサルであった。サルの足跡は人間の手のひらを小さくしたような形状なので分かりやすい。通常、サルは群れで行動するが、この時期のこんな山奥ではエサがあるとは思えず、通常は里に近い山にいるはずだ。1頭だけはぐれたのだろうか。

 1243m峰への登り返しはかなりの急傾斜で、サルはここを下ってきたようで滑った跡があった。アイゼンも無しでこれを下るのは大変だろう。それとも熊のように頑丈な爪があるのだろうか。標高1210m付近が雪庇になりかけているようでいちだんと急だが、サルがそこを下っているのでアイゼン、ピッケルを持った私がしかも登りなのだから大丈夫だろうと直線的に突破。傾斜が緩んでてっぺんの一角が見えると小さな雪庇ができていたがここは傾斜は緩く、簡単に乗り越えることができた。

 1243m峰は展望が良く、正面奥には瘤杉山、振り返ると1303m峰だが、両者の山容は対照的。瘤杉山は黒くてピラミダル、1303m峰は平坦でブナが点在する白い山。そして瘤杉山手前の1260峰は瘤杉山と同じ植生で黒い針葉樹に覆われてヤバそうな雰囲気をまき散らしている。あそこからが本当の危険地帯だろう。あれを突破できないと瘤杉山に取り付くことさえできない。

 1243m峰の下りは思いのほか傾斜は緩く危険個所は無く1190m鞍部に到着。次は1260m峰への登りだが、地形図では尾根は広く危険個所は無いように見えるのだが、確かに最初だけはそうなのだが少し登ると尾根が痩せて傾斜もきつく雪が割れて灌木藪が出ている。尾根の両側は切れ落ちているので藪を迂回するわけにはいかないので正面突破。それほど濃い藪ではないので許容範囲だ。

 一度灌木が切れて残雪の塊が尾根にへばりついた急傾斜が登場。遠くから見たときに1260m峰から植生がブナ等の落葉広葉樹から針葉樹に変わっているのが見えていて、危険地帯を予感させたがたが実際にその通りだった。これまでは危険と言えば雪庇崩壊だったが、ここは尾根の両側とも切れ落ちているのでこれまでのように左右どちらかに迂回することが不可能となり、狭い範囲で多少は進路を左右に振ることは可能であるが、基本的には尾根上を直進するしかない。雪が完全に無くなっていればまだいいが、急な尾根に中途半端に雪が付いて始末が悪い。それでも最初の一段はどうにか登っていけたが、標高1230m付近で尾根を横断するように1m程の垂直な雪壁が登場したところでストップ。雪壁直下も細い尾根と雪が付いた急斜面で迂回は不可能。おまけにこんな場所に限って藪が無く手掛かり足掛かりが無い。無理をすれば私の技量でも突破できる可能性があるが、もし失敗した時のリスクが大きすぎる。滑落すれば崖状の急斜面を谷底へ一直線で、途中にある木に激突して軽い怪我では済まないだろう。また、雪壁の上部は岩らしきものが見えており、この先もかなりリスキーだろう。残雪期にこのルートを攻める場合は安全確保のため登攀用具が必要だ。残念であるが今回はここで断念することにした。瘤杉山は無雪期に個別にやることにしよう。

 安全地帯の1190m鞍部まで戻って休憩。ここから幕営予定地点まで戻るのにもいくつもピークを越える必要があり時間がかかるので休憩が必要だ。猪頭山と瘤杉山は標高はほぼ同じであるが、最低鞍部が瘤杉山に近い場所にあるので、基本的に帰りは登り返しとなる。天候は穏やかに晴れているが、気温は低めで日当たりがいい場所にいて快適に感じるくらいであった。

 日が高くなり日当たりのいい場所では雪が緩んで急な下りはアイゼンを装着していても滑るため、場所によってはバックでキックステップで雪に蹴り込みながらピッケルも併用して慎重に下った。それでいて日当たりの悪い北斜面では雪が固く締まってアイゼン、ピッケルとも刺さりが浅いのでこれまた要注意。危険個所が連続するわけではないが、要所要所では気合を入れて進んだ。

 猪頭山西側の1280m鞍部まで下ればもう危険個所は無くなり、登り返して山頂まで登らずに西側斜面をトラバースして荷物をデポした1310m鞍部に到着した。

 ここ2年はコロナの影響で無雪期でも幕営はしていなかったので久しぶりの幕営だ。往路で見つけた西寄りの風を避けられる場所の雪を均してテントを設営。まだ日が高いのでピッケルにアイゼンをひっかけ、テントの紐にはロングスパッツをぶら下げて天日干し。濡れたままだと翌朝に凍り付いている可能性があるためだ。雪のある場所ではペグを打っても効かないので、ペグを横にして上から雪を被せて踏み固めて固定。翌朝にはカチカチに凍って十分に固定の役目を果たしてくれた。

 テント内に入ってからは水作り。ビニール袋の中で溶かしたおかげで比較的短時間で2リットル近く溶かすことができた。日差しがあるうちは寒さは感じなかったが、日没後は急激に気温が低下。体を温める意味でもウォッカのお湯割りとたんぱく質がが豊富なおつまみで晩酌をして就寝。

 雪がある季節での幕営では寒さ対策は必須だが、快適性と荷物の量は大いに相関するので無制限に防寒装備を増やすわけにはいかない。今回は久しぶりにダウンジャケットを準備したのだが、なんと出発時にザックに入れるのを忘れてしまい、それが発覚したのは富山県に突入した頃だったので、代替装備として車中泊で使う装備や帰宅時の着替えのために用意した衣類を持ち上げた。シュラフは冬用の重いヤツで、マットは断熱性が高いエアマット+薄手の銀マットの2重構成としたが、それでも背中に伝わる冷気を抑えきれず、寒さでほとんど寝付けなかった。最終手段でザックを地面に敷いてしのいだが、今後の大きな課題だ。水は凍結しないよう、朝飯に使う分はペットボトルに入れてシュラフの中へ。これは正解で、テント内の水は翌朝にはシャーベット状になっていたので、おそらく気温は-5℃以下に下がっていただろう。夜中は強風で木がざわつく音がしたが、テント設営場所が良かったのでテントが揺れることは無かった。

 翌朝は下るだけなので急ぐ必要は無いが、早朝で冷えて雪が締まった時間帯に距離を延ばすのが得策なので4時に起床。久しぶりに餅入り麺を作ったが、今回は餅がなかなか柔らかくならずに時間がかかってしまった。半分固い状態で餅を齧ったが次回はメニューを考えないと。飯を食い終わる頃には外は十分に明るくなり、テント撤収時にはライトは不要だった。昨日の日中はビチャビチャになっていた雪はカチカチに締まっていて、今日は最初からアイゼンの出番だ

 帰りのルートは瘤杉山へのルートと比較すれば危険個所は無いが、それでも数か所で雪壁を迂回してトラバースする必要があり、雪が固く締まっているので滑落には注意が必要だ。今日も天気はいいがやや雲が多く、立山、剱岳には雲が絡んでいた。雨を降らせるような濃い雲ではないが、天気予報によると今日は天気は下り坂とのことだ。ただし北陸で雨が降るのは夕方以降とのことで、私の行動中は大丈夫だろう。

 雪に隠れたクラックにはまったりと多少のトラブルはあったが概ね順調に進み、ワカンをデポした1250m鞍部でワカンを回収。冬装備で元のザックの重さが重いので、ワカン程度の重さが加わってもほとんど変わらない。

 二重山稜の982m峰で休憩しようとザックを下ろそうとしたら新しいスノーシュー跡が出現。私と同じく小川温泉方面から上がってきてこのピークで足跡は引き返していた。今の時間帯は雪が締まって跡は残らないので、これは昨日の日中のものに違いない。もともとの計画がこのピークまでだったのか、それとも時間や体力の都合でここで引き返したのかは分からない。

 休憩後はこのスノーシュー跡を追うように下っていく。この人はかなり急な下りでもスノーシューのまま下っていて、スキーのように滑った跡さえあり、かなり手慣れた人に違いない。私はアイゼンなので当然ながら滑ることはないので歩きやすい。

 標高830m付近から尾根幅が細まるがここは往路では尾根上ではなく左側(西側)の浅い谷を下ったはずだが、尾根上でも歩けるのでそのまま下るが標高740m付近で尾根が消滅して急斜面に変わるので、ここで往路に合流すべく西へ下った。スノーシューの跡はどのように歩いていたのかこの付近は良く分からなかったが、往路に合流するとスノーシュー跡が復活。基本的には私と同じルートを歩いたようだ。

 尾根から林道へ下る急な小ルンゼでは再びスノーシュー跡は分からなくなったが、さすがにこの傾斜はスノーシューのまま下るのは無謀だろうからアイゼンかツボ足だろう。若しくは私とは別ルートで尾根に取り付いたのかもしれない。小ルンゼの最後は傾斜が非常にきついのでバックで慎重に下って林道に降り立ったところ、ルンゼ入口付近に足跡あり。おそらくスノーシューの主のものだと思うが、ルンゼの中には足跡は無かったのでここを登ろうとしたが別ルートに切り替えたのか、それとも雪が締まって足跡が残らなかったのかどちらだろう。

 林道上はスノーシューの跡ではなくツボ足で沈んだ跡が続いていたが、今の時間は全く沈まない。まだデブリを越えたりするのでアイゼンを履いたまま下り、標高390m付近の橋以降は路側の雪が消えた区間が長くなるのでアイゼンを脱いで歩いた。重いアイゼンが無いと足は軽いが背中の荷物の重さはワカンより確実に増えたのが分かる。まあ、もう登りは無いのでいいけど。

 最後は林道から河川敷に下りて除雪終点へ。まだ観光シーズン前だしコロナの影響もあってか小川温泉前の駐車場は2,3台が駐車するのみ。自分の車はこの先の橋を渡った先にあるのでもうちょっとだけ歩いてゴールイン。ザックを車に適当に積んで朝日小川ダム横の駐車場に移動して着替え、テントやシュラフ、濡れたものをアスファルトの上に広げて虫干し。やや風があるのでテントが飛ばされないように中に重い防寒長靴とピッケルを重り代わりに入れておいた。やや雲は増えたものの日差しはたっぷりで短時間で乾いた。


まとめ

 瘤杉山は危険地帯の突破ができずに断念となったが、充実した山行を楽しむことができた。今年はおそらく例年より残雪が多いと思うが、おかげで尾根の藪の大半はまだ雪の下で楽をさせてもらった。所要時間から見て猪頭山だけなら小川温泉から日帰りが可能だろう。林道が除雪された時期に歩けばもう少し楽になるだろうが、尾根の雪割れが進んで藪が出てくる可能性が高いかも。

 

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